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2020年からプログラミングが必修化
2020年から初等教育においてプログラムを学ぶのが必修化します。
つまり、小学校でもプログラミングの授業が行われるということです。しかし、どうしてプログラムが必要とされているのでしょうか?
今回は2020年のプログラミングの授業必修化の目的と効果、おすすめの準備方法を考えていきましょう。
プログラミング必修化の目的
プログラミングの授業はどのような目的で必修化されたのでしょうか。
文部科学省の言葉を引用してみましょう。
プログラミング教育とは、子供たちに、コンピュータに意図した処理を行うよう指示することができるということを体験させながら、将来どのような職業に就くとしても、時代を超えて普遍的に求められる力としての「プログラミング的思考」などを育むことであり、コーディングを覚えることが目的ではない(1)。
つまりプログラムを組み立てることで、プログラムのようにシステムを構築したり、システマチックに物事を考えることを学ぶというものになります。
また、政府がまとめた「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について」では、「今後10年~20年程度で、半数近くの仕事が自動化される可能性が高い(マイケル・オズボーン氏)との予測や、子供たちの65%は将来、今は存在していない職業に就く(キャシー・デビッドソン氏)といった予測がある。人工知能が職業を奪うという可能性が指摘されている一方で、人工知能が新たな職業を生み出す可能性も指摘されていることに留意が必要である」と記載されており、プログラミング教育が新たな社会についての対策の意味もあることが分かります(2)。
プログラミング教育はなぜは必要なのか?
日本はIT人材が不足
ではなぜプログラミング教育が必要なのでしょうか。
一番の理由として挙げられるが、日本のIT技術の水準であり、先進国でありながらIT技術が非常に遅れていると言われています。
またIT人材も不足しており、今後2020年には36.9万人、2030年には78.9万人のIT人材が不足すると予測されており、人材確保は極めて重要です(3)。
数学大国インドの事例
現代は情報技術が様々な場面に使用されています。IT技術の高さが、国力に直結してくると言っても過言ではないでしょう。
例えば、BRICsの一翼を担うインドでは、元々数学に強い国であると同時に、初等教育など早い学年から段階的にプログラミングを学べるようにカリキュラムが作られています。
初等教育ですでにLOGOを用いた簡単な図形描画が組み込まれ、中学校でQBasic、Visual Basic、C++、Javaの基本技術、高校ではHTML、XML、C++を教えています。そのような甲斐あり、インドのバンガロールは「インドのシリコンバレー」と呼ばれるまでに成長しています。インドはプログラミング教育により、IT分野で一気に成長した国であるのです。
このようにIT技術は今後の経済発展の重要な要素であり、プログラミング技術無くしては国際競争の中で生き残っていくことはできないと言ってよいでしょう。
少子高齢化
さらに昨今の少子高齢化の問題への対応にしても、IT人材の育成が求められています。
日本のみならず、先進国が少子化の傾向にあり、労働力をロボットに移行する動きが出てきています。工場も工業用ロボットが普及し、介護から車の運転まで、AI・ロボットが社会に加わってきています。
そのため、社会に求められるだけのシステム・機械を開発する技術者、そしてシステム・開発を運用できる人材の育成が急務と言えましょう。
プログラミング教育を取り入れている国々
2017年現在、小学校で完全にプログラムの教育を義務化している国は5つだけです(4)。
小学校からプログラミング教育を必修化している国
- イギリス
- ハンガリー
- ロシア
- オーストラリア
- フィンランド
また、小学校からと言わなくても、高等学校からプログラミング教育を義務化されている国は多くあります。
それは以下の国々です。
高等学校からプログラミング教育を必修化している国
- フランス
- イタリア
- スウェーデン
- ハンガリー
- カナダ
- アルゼンチン
- 韓国
- シンガポール
- 香港
- 台湾
- インド
- 南アフリカ
このように、アフリカでさえ義務教育とされているのですが、日本ではこれまで義務教育化されていません。
この事実に、日本政府も危機感を抱いたと言えましょう。
プログラミング教育ではどのようなことをするのか?
2017年現在では、「義務化はするが、必須科目化はしない」という方針を定めるということにしています(5)。
つまり「総合的学習の時間」と同じような扱いになるということです。
どの程度の時間、どの規模で教えるのかは各学校の自由とされています。
おそらくですが、学校にプログラミングを教えられる教員は多くないため、外部の企業と協力してプログラミングのシステムを理解させるような学習する方法を採るかと思います。
どのような準備をしておいたほうがよいか?
さて、まだどのような教育を施すかが決まっていない中で、どのような準備をしておくことが望ましいのでしょうか。
もし「プログラミングの仕事」と聞いて、ぱっと頭に具体的な姿が浮かばなければ、まずはプログラミングで何ができるかを知ることから始めることをおすすめします。
最近では親子参加を狙ったプログラミングイベントが各地で催されています。
2017年の夏休みには全国の小学生の約半数がプログラミングイベントに参加したというデータもあり、新しく必修化されるプログラミング教育への高さがうかがえます(6)。
このように、近くでプログラミング講座のイベントなどがあれば参加し、できることなら専門学校の体験入学などでプログラムについて教わるなどプログラムの全体像を把握しておくのは良いことでしょう。
プログラミング教育により期待される効果 ‐まとめにかえて‐
今回はプログラミング教育について見てきました。
最後にこのようなプログラミング教育で得られる効果についてまとめていきましょう。
1つはもちろんプログラミング知識の取得です。例え簡単な命令文によるものであっても、コンピュータの動かし方を学ぶのは、IT人材の育成に直結することは言うまでもありません。
そしてもう1つは上述の文部科学省のコメントでも掲げられている通り「プログラミング的な思考力」が見につくということです。「プログラミング的な思考力」というのは、「論理力」という言葉に置き換えてもよいでしょう。
近年知的労働が多くなってきたことで、これまでのようにただ長時間働く、言われたことをこなすだけでは生産性の高い仕事ができなくなってきました。
多くのタスクを抱える中で、いつ・どこから着手していくのかを自ら判断し、処理していかなければなりません。その時、プログラミングを書くように、論理的に判断をしていく力が役に立つのです。
注
- (1)文部科学省(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/122/attach/1372525.htm)
- (2)同上
- (3)経済産業省(http://www.meti.go.jp/press/2016/06/20160610002/20160610002.pdf)
- (4)https://blog.codecamp.jp/programming-compulsory-education
- (5)文部科学省(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/122/attach/1372525.htm)
- (6)http://www.softbank.jp/sbnews/entry/20171024_01