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『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』から何が学べるのか?

本・歴史の話のアイキャッチ

経営学の大家である野中郁次郎先生が他の戦史研究家とともに「なぜ大東亜戦争で日本は敗れたのか?」に迫った『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』は発刊から20年以上経った現在でも、人気のある経営書です。
今回は同書から何が学べるのかを学べました。

『失敗の本質』誕生の経緯

客観的に見て、最初から勝てない戦争であった

経営学の大家である野中郁次郎先生が他の戦史研究家とともに「なぜ大東亜戦争で日本は敗れたのか?」に迫った『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』(以下、『失敗の本質』)は戦争を扱った本でありながら、経営戦略の名著として、今なお多くの人に読まれています。
とあるプロジェクトから大東亜戦争の分析をする中で、大東亜戦争は客観的に見て日本軍は最初から勝てない戦争だったという理解に至りました。
そして、「ではなぜ日本は勝てない戦争に突入したのか」ということに、野中先生の興味は徐々にシフトしていきました。
その野中先生の疑問の一つの解答である本書では、文明史や精神史に注目した戦史研究が多い中で、「戦い方」「負け方」を研究対象とし、現代の文脈に当てはめることを目的としています。

現代でも日本軍と同じ状況に陥る可能性は高い

ではどうして現代の日本に、日本軍が犯した失敗が関係あるのでしょうか。
往々にして、軍隊というものは合理的・階級的官僚制組織の最も代表的なものです。つまり、軍隊というのはもっとも合理的で制度化された組織であらねばなりません。
当然、大東亜戦争前の日本軍も合理性と効率性を追求したはずですが、戦中にその二つが相反してしまっていました。
また、この合理性と効率性の排反が敗戦の一因であるにもかかわらず、『失敗の本質』が発表される前まではあまり取り上げられてきませんでした。
そのため、本書では日本軍の失敗例からその組織的欠陥や特性を分析し、組織としての日本軍の失敗に籠められたメッセージを現代によみがえらせることが一つの目的となっています。

『失敗の本質』が分析対象としているもの

上述の通り、大東亜戦争を扱った研究は精神や思想に注目したものが多い中で、『失敗の本質』では「戦い方」「負け方」を研究の対象としています。
そのため、『失敗の本質』では、個々の重要な作戦とその作戦を指揮した上級司令部に研究の焦点があてられています。
本書は、第1章から第3章までの3つの構成となっています。第1章ではケーススタディとして、日本軍が大きな失敗を犯した各戦闘を取り上げています。そして、第2章・第3章では、それらのケーススタディをもとに、どのようなことを教訓とすべきかがまとめられています。
ここでは各章の内容を少しふれていきます。

第1章で採り上げられている6つのケース

ノモンハン

ノモンハン事件はあまり日本史の授業では大きく取り上げられることの少ない事件です。
ノモンハン事件は日本軍がアメリカとの戦争に入る前に発生したロシア軍(ソ連軍)との衝突事件です。
作戦目的が曖昧であり、中央と現場の意思疎通が図れず、過度に精神主義が誇張された。
結果として日本軍はロシア軍に大きな痛手を負わされるのですが、このノモンハンの失敗はフィードバックされませんでしたませんでした。
ノモンハン事件は大東亜戦争に含まれないことが多いものの、『失敗の本質』ではこれからの日本軍の失敗を象徴するような、重要な事件として取り扱っています。

ミッドウェー

ミッドウェー海戦は大東亜戦争のターニングポイントとなった戦闘として有名です。
作戦目的の二重性や部隊編成の複雑さも去ることながら、不足の自体が生じたときに日本軍がどのような反応をとったのかを追跡しています。

ガダルカナル

ミッドウェー海戦が海軍のターニングポイントであれば、ガダルカナルの戦いは陸軍の岐路になったとされています。
ガダルカナルの戦いでは情報の貧困と戦力の逐次投入という問題が重なり、日本軍は窮地に陥ってしまいます。
次第に物資の補給も難しくなり、「餓島」とまで言われたガダルカナルの話は大東亜戦争の悲劇として有名です。

インパール

ガダルカナルの話と並び、日本軍の悲劇として名高いのがインパール作戦です。
戦略的合理性を欠いた作戦の代表であり、そもそも実施する必要のない作戦でした。
このインパール作戦の中心人物は牟田口廉也中将ですが、彼を中心として日本軍が情緒主義に陥っていたこと、個人の突出が大きな失敗につながったことが明らかになっています。

レイテ

レイテ沖海戦はフィリピン奪回を目指す米軍を日本軍が総力を挙げて迎撃した戦闘で、動員された兵隊の数から「史上最大の海戦」とも呼ばれます。
これまでケーススタディとして取り上げてきた戦闘に比べ、日本軍が精緻をこらした作戦であったものの、やはり作戦の目的が曖昧であり、結局日本軍は敗退してしまいました。

沖縄

沖縄は日本で数少ない地上戦が展開されました。
この沖縄の戦いであっても、日本軍は持久戦を展開していくのか、それとも航空決戦を進めていくのか、方針をはっきりさせずにいました。さらに、現地軍隊と大本営の認識にズレがあり、この沖縄戦もまた負けるべくして負ける戦いとなってしまいました。

「戦い方」「敗け方」の組織論的究明をしていく。

情報整理(第2章)

第2章では、共通してみられる日本軍の組織的特性や欠陥を抽出し、第3章で行う分析のための情報整理を行っています。

日本軍の失敗の今日的課題(第3章)

第3章では、第2章で見られた日本軍の特性や欠陥が今日に継承されていないか、日本軍の失敗が意味する今日的課題の提示と解明が成されています。

目的の明確化が何よりも大切

以上、今回は『失敗の本質』の内容を概観していきました。
『失敗の本質』から得られる教訓は多々ありますが、少し触れただけでもあいまいな作戦目的というのが戦略の大敵であることがわかります。
こうしたことは現代の経営戦略でも同じであり、戦争と経営の類似性が『失敗の本質』の魅力であると言えるでしょう。