ピーター・S. パンディ、ローランド・R. カバナー、 ロバート・P. ノイマン『シックスシグマ・ウエイ―全社的経営革新の全ノウハウ』( 高井紳二・大川修二訳 )日本経済新聞社 、2000年

シックスシグマウェイ

信頼性99.9997%を実現するために

本書はGEで採用されたことで有名なシックスシグマについて書かれた本です。

シックスシグマの名前にある「シグマ(σ)」とは統計学でバラツキを意味する標準偏差を示す記号であり、1σより2σ、2σより3σのほうがバラツキが少なくなっていきます。

そして6σ、すなわちシックスシグマの状態になればほとんどバラツキのない状態となります。こうした状態になるまで会社の改善を継続していこうというのがシックスシグマのアイデアです。

では、信頼性99.9997%と言われるシックスシグマはどの

例えば配達の信頼性99%の宅配業者があったとしましょう。この業者は99%の確率で時間通りにご配送なく荷物を行います。この業者が30万件の配達をした場合、29万7,000件は適切に荷物が届けられますが、3,000件はご配送をしたり、時間通りに配達できなかったりします。

しかし、シックスシグマが達成された宅配業者であれば、30万件の配達をしてようやく1件のミスがある程度に留まります。

PDCAならぬDMAICモデル

シックスシグマではDMAICモデルを採用しています。世間ではPDCAという言葉をよく耳にします。Plan(計画),Do(実施),Check(見直し),Act(改善)を繰り返す改善手法です。

このPDCAに対し、シックスシグマのDMAICモデルではDefine(定義),Measure(測定),Analyze(分析),Improve(改善),Control(管理)を繰り返します

そして対象になるのは仕事のプロセス(工程)です。

よくシックスシグマの例に挙げられる「朝ご飯をつくる」「会社に来る」という行為だけでも、実はさまざまなプロセスを経てなりたっているもので、これが会社の業務になればそのプロセスは何倍・何十倍にも増加します。

シックスシグマでは業務のプロセスは何かを見直し、問題の特定・目標の設定を行い(定義)、実際の状況を検証します(分析)。その後、問題を分析し(分析)、テストや解決策の標準化を行い改善していきます(改善)。そして、問題が解決されたのであればパフォーマンスを維持していき、まだ問題が見られるのであればさらなる改善活動を続けていきます(管理)。

シックスシグマは理想のゲーミフィケーション

ただ、ここまでの話であれば、改善などを考えていく上で、他の本にでも書かれていることのように感じます。それこそ本書の冒頭にも書かれているTQMなどと大きく変わるアイデアとも思えません。

このシックスシグマと他の改善手法との最大の相違点は「ブラックベルト」の部分です。

このブラックベルト制度では、シックスシグマに携わるメンバーの中で「スポンサー」、「グリーン・ベルト」、「マスター・ブラック・ベルト」、「チャンピオン」などの役割を設け、改善活動の運用・補助を行います。

本書の第9章に詳しく書かれたブラックベルトの制度は、一見改善活動に何の関係もないように思える項目であるにかかわらず、マスターまでの道筋などが詳しく描かれています。しかし、このブラックベルトを任されるというロールプレイングや、マスターになりたいという目標が、改善活動を楽しくさせ、長期にわたる運用を可能にしているのだと思われます。

シックスシグマとは、上手く改善活動をゲーム化できた制度であり、ゲーミフィケーションの理想の形であると言えましょう。